こんにちは☀
西オーストラリア州で兼業農家をしております、ナイーブMEです👩🌾
オーストラリアでたまに見かける青いペンキで塗られている木の存在をご存知でしょうか?
特に田舎(主に西オーストラリア州)でよく見られます。
これにはちゃんと意味があります。
『君はひとりじゃない、しんどくても、大丈夫じゃなくてもいいんだよ。』というメッセージが込められているのです。
これには悲しい物語が背景にあります。
ジェイデンの青い木の物語
青年の悲劇
2018年に29歳のオーストラリア人男性ジェイデン・ワイト(Jayden Whyte)が自ら命を絶ちました。
彼は西オーストラリア州のパースから東へ約300kmのところにある穀倉地帯Mukinbudin の出身で、亡くなったときはシドニーで暮らしていました。
彼は精神的に病んでおり、自分で自分を殺してしまうかもしれないと恐れて病院の緊急病棟へ一日に2度駆け込みましたが、2回とも大丈夫だと言われて家に帰されてしまいました。
そして、その2度目に帰されたあと自ら命を絶ってしまったのです。
ジェイデンの青い木
ジェイデンがまだ西オーストラリア州に住んでいた2014年、父親の農場で面白いいたずらを思いつきます。
それは、死んだ木を青色に塗ること。
何もないただ広い農地に立っているこの木を真っ青に塗れば、父親はびっくりするのではないかと思い、夜中にこっそりと友だちと塗ったのです。
ジェイデンと愛する人を思って
ジェイデンの葬儀にて、この木をいっしょに塗った友人がスピーチをしました。
その友人による当時の様子はこちら(英文)↓
スピーチでは青い木の思い出を語り、ジェイデンを思って、そして自分の愛する人々を気にかけることを再認識しようという思いを込めて、死んだ木を青く塗ってはどうかと提案しました。
青い木がたちまち有名に
そのスピーチを聞いたジェイデンの親友サイモンが、彼の父親の農場の15mもある木を真っ青に塗りました。
この写真に
"It is a tribute to my best mate and hopefully the start of something very special."
"これは僕の親友とのトリビュートであり、これが特別な何かの始まりであることを願っています。"
というメッセージを添えてFacebookに投稿しました。するとそれが瞬く間に世界中に拡散され、同じように青色に塗られた木が増え始めたのです。
たくさんの反響を得たサイモンは、彼の姉とジェイデンの残された2人の妹と協力して『Blue Tree Project』を立ち上げたのです。
Blue Tree Project (ブルーツリープロジェクト)とは
このように始まったプロジェクトですが、ただ木を青く塗るだけではありません。
このプロジェクトの使命は、口にしにくいような精神病と闘っているいことを発言できるよう人々を勇気づけたり、また発言できるような社会を築くことです。
木に青いペンキを塗り広げることで『It's OK to not be OK(大丈夫じゃなくても大丈夫)』すなわち『大丈夫じゃなくてもいいんだよ』というメッセージを広げ、精神病に未だにある悪いイメージをなくしていこうというものです。
そのために具体的な活動としてはジェイデンの妹たちが講演を開いたり、ブルーツリー作りを地域を巻き込んだイベントにして人との繋がりを深めたり、鬱や精神病への理解を広めるための勉強会などを開いているようです。
詳しい内容はこちらをご覧ください(英文)↓
ブルーツリー作りではジェイデンの物語に沿うことと自然環境に配慮することを重んじているため、いくつかのルールがあります。
- 塗るのは死んだ木や木のオブジェなど自然に害を与えないもの
- 色は濃いめの水色
- ペンキは毒素の入っていないもの
- 布や毛糸で編んだものを木に巻き付けたりするのもあり
To encourage Western Australians to speak up about mental health, the #CityOfPerth parking team and Australian Federal Police (AFP) staff took part in the #BlueTreeProject, wrapping trees in blue at the AFP Building and in CPP carparks. #MentalHealthWeek pic.twitter.com/51FetFO3by
— City of Perth (@CityofPerth) 2020年10月10日
これまで、このプロジェクトを通して612本のブルーツリーが誕生しています。オーストラリア国内に留まらず、ヨーロッパやアメリカ、ニュージーランドにもあります。
ブルーツリーリストはこちら↓
リストのものはプロジェクトに申請して公式のものとして登録されているようですが、それ以外にもブルーツリーはたくさん存在します。
というのも、私がファームからパースへ行くまでの約500kmの間でも20本近く見かけます。
パースの街中でもカフェの植木としてあったり、一般家庭の小さな植木鉢の中にブルーツリーが飾られているのも見たことがありますが、その数は確実に増えていっています。
日本でもここ数年、自殺者の数の増加や著名人の自殺など悲しいことを聞きますが、オーストラリアでも他人事ではありません。
オーストラリアでは年間に約3000人が自殺によって命を落としており、平均すると一日8人。これは、交通事故で命を落とすよりも数が多いのです。
Suicide in Australia | Australian Government Department of Health
しんどいときにしんどいと言える相手がいるに越したことはありませんが、そうじゃない人もいます。
そんなときブルーツリーを見て、ブルーなときがあってもいい、わたしは一人じゃない、大丈夫じゃなくてもいいんだと思えるように。
また、特にしんどい訳でもない人は周りの人のことを思い出し声をかけてみる、あの人は元気かなと気にかけてみる。
まさにコロナ禍の今、しんどい人がしんどいと言える優しい社会が求められているときだと思います。
日本はお盆ですね。
最近声をかけていなかったあの人に、連絡をとってみてはどうでしょうか?