こんにちは☀
西オーストラリア州で兼業農家をしております、ナイーブMEです👩🌾
先月末から子ヤギのペットがいましたが、先日新たな家族へ売ってしまいました。
私にとっては初めてのペットヤギでしたが、それは望んで手に入れたものではありませんでした。
どうしてそれなのにペットヤギがいたのか、そして売ってしまったのかをお話します。
我が家のヤギ飼育法
うちは現在約150匹のヤギを飼っているヤギ農家です。昨年は子ヤギが50匹以上産まれました。
ヤギの放牧スペースは40haあり、できるだけ自然に近い形で世話をしています。餌は基本的には放牧スペースに生えている草だけで、草のない季節には干し草など私たちが用意した餌を食べさせます。
生後2ヶ月の子ヤギとその母ヤギ、出産前ヤギは群れから離して別の小さめのエリアで目の届く範囲で過ごさせますが、それ以外のヤギは24時間完全放牧。夜は自分たちで群れを作って寝て、朝になれば勝手に放牧という感じです。
もちろん定期的な健康チェックやワクチン注射などはしています。
また、最も恐れている外敵がキツネなので、放牧エリアの周りには毒を仕掛けたり、定期的なシューティングをしたりしています。
ヤギは比較的安産で人間の助けが必要ない場合がほとんどです。子ヤギは産まれて30分以内に自力で立ってお乳を飲みます。
このときに私たちはよっぽどのことがないと手伝いません。子ヤギを育てるのは母ヤギの仕事なので、それに下手に人間が手を出すと母ヤギが子ヤギを拒むようになってしまいます。
母ヤギに拒まれた子ヤギは自然界では死を意味します。そうならないように、お手伝いは最小限。それが私たちのやり方です。
そのため、これまで子ヤギを溺愛するように可愛がったりすることがなく、ましてやペットヤギは存在しませんでした。
ペットヤギの誕生の経緯
みなしご双子誕生
4月中旬に知人のためにヤギを購入。このヤギはうちで欲しい品種ではなく、最近ヤギ農家を始めた知人が買いに行けないのでと代行で買ったものです。
予定ではその翌週には引渡すつもりでしたが、お互いの予定が噛み合わず、ずるずるとうちに住まわせていました。
すると購入から約10日後に、そのうちの1匹が双子のオス子ヤギを産みました。
元の飼い主からは5月くらいに産まれるかも。とだけ言われていたので、こんなに早く産まれてくることは我々の計算外でした。
しかもこの日は、旦那氏は体調がものすごく悪くて寝込んでいたので私一人でバタバタしており、子ヤギの出産を見ることはなく、産まれてから数時間後に発見しました。
普通ならば産まれてすぐは母ヤギが子ヤギの体液を舐めて、30分以内には授乳します。その後も警戒心をあらわに子ヤギの近くに立って離れないのが普通です。
しかし、この母ヤギは私が発見した時にはぐったり座り込んでおり、授乳した様子がうかがえませんでした。
私が立たせようとしても立ち上がらず、むしろ弱っていっているのが分かったので、死に際の母ヤギのお乳を子ヤギに咥えさせ母乳を飲ませました。
そしてその1時間後には母ヤギ死亡。
死んだ母ヤギからは搾乳器でありったけのお乳を搾り取って保存しました。
我が家にはヤギ用の粉ミルクもありますが、産まれてすぐの子ヤギは母乳を飲まないといけません。出産後すぐの母乳にはcolostrumという初乳で特殊な栄養が豊富に含まれており、これを飲むことで免疫力が高まります。
大した量は採れませんでしたがその母乳を哺乳瓶に入れて授乳し、初日はなんとか終えました。
ひとりぼっちのチョコレート
翌日には黒ヤギが弱り始め歩けなくなり、最終的には死んでしまいました。
つまり茶色ヤギは完全にみなしごになってしまったのです。
これまでのヤギ農家としての約6年間、出産後に子ヤギが死んでしまうことはたまにありましたが、母ヤギが子ヤギを残して死んでしまうのは初めてだったのでかなりショックでした。しかも今回は兄弟まで亡くしてひとりぼっち。
ヤギは自分の子ども以外の授乳を受け付けないので、この子を育てるのは私たちしかいないのです。
さすがに自然に近い形で育てたいとはいえ、放っておいたら誰も助けずに死んでしまうと分かっているこの子を放置する訳にはいきません。
彼がひとりぼっちなった日から、チョコレートと呼ぶようになり、1日5回の人口哺乳をすることになりました。
チョコレートにとってお乳をくれる私たちは親であり、ものすごく人懐こくなりました。
こうしてペットヤギが誕生したのです。
同い年の3つ子
チョコレートを語るうえで、半日違いで産まれた3つ子の存在もちょっと触れておきます。
チョコレートが産まれた半日後には、別の母ヤギが出産し3つ子を産みました。
3つ子は普通の子ヤギよりも小さめで産まれるものですが、今回そのうちの1匹は更に小さくまともに歩けないほど弱々しい。
それでも母ヤギが子ヤギの傍から離れようとはしないので、母ヤギを信じて子育てを託しました。しかし、翌日には2匹が死亡。なんと、最もか弱い1匹のメスだけが生き残っていたのです。
それでも数日間はろくに歩くことも出来ず、座ったままお乳を飲む状態。
このままではこの子の命も危ないと思い、ここから数日間はこの母ヤギのお乳を絞って、生き残った1匹とチョコレートに人口哺乳をしました。
ただし、母無しのチョコレートにはたくさん飲ませ、生き残った1匹には少しだけ。というのも、母ヤギのいる子には母子関係を繋がないといけないので、自力で飲むことにも期待をかけました。
そして、遂に生後5日目には自力で立ってお乳を飲みはじめたのです!
それまではこの親子とチョコレートを24時間一緒に過ごさせていましたが、このときから母子関係に刺激を与えないよう朝晩はチョコレートを離して裏庭で世話するようになりました。
チョコレートの一日
温室での目覚めと授乳①
3つ子の白ちゃんは元気にお母さんと過ごしているので、一人ぼっちになったチョコレートは夜は裏庭の温室で過ごすことに🐐
— 兼業農家👩🌾ナイーブME in 🇦🇺 (@kengyonouka) 2021年5月3日
夜9時と朝8時の授乳があるので、私としても家に近い方が都合が良い👍
毎朝こんな感じで温室のドアが開くのを待っています🐐#オーストラリア #田舎暮らし #ヤギ #子ヤギ https://t.co/SreBRxKiE1 pic.twitter.com/J4AM2wy13X
だいたい7~8時の間に授乳します。
3つ子母子のエリアまで移動
飲み終えると、約100mほど離れた3つ子の母子がいるエリアまで移動。
驚くことに、生後2日目からこの距離をひとりで(1匹でってことです)ノンストップで歩きました!
温室で夜を過ごして朝の授乳が終わると、100mほど離れたヤギスペースへ歩いて移動するチョコレート🐐
— 兼業農家👩🌾ナイーブME in 🇦🇺 (@kengyonouka) 2021年5月4日
上から見ると太眉の両津勘吉みたい🤣#オーストラリア #田舎暮らし #ヤギ #子ヤギ pic.twitter.com/3g11JW7Srk
揺れる耳としっぽが可愛い♡
到着後は、3つ子の生き残り1匹と母ヤギのいるエリアに放置です。
普通の子ヤギならば授乳後は寝ますが、チョコレートはかまって欲しいのかしばらく鳴き続けます。でも、こちらも忙しいのでそれは無視。
授乳②
10:30頃に2回目の授乳。
この後も足元にまとわりつかれますが、振り払って放置。
授乳③
13:30頃に3回目の授乳。
この子めっちゃ吸いつきが良い😳‼️
— 兼業農家👩🌾ナイーブME in 🇦🇺 (@kengyonouka) 2021年4月26日
もう一方の黒ヤギちゃんはまだ吸いが弱くてあんまり飲めてないから心配😥#オーストラリア #子ヤギ #ヤギ https://t.co/icaNSBSgoK pic.twitter.com/hZ5mLGlA7p
上のTwitterは生後2日目のものですが、既にノンストップで飲みきるほど吸いが強い!
飲み終えた後もちょっと遊んでやると指に吸い付いてきます。
生後5日以降は吸いが更に強くなり、ペットボトルが凹むほどの吸引力でした。
また、子ヤギの視力ってけっこう悪いものだと思っていましたが、チョコレートは私や旦那氏を遠くからでも見かけると鳴きながら駆け寄ってきました。
あまりの可愛さに、たまには仕事中でも遊んであげました♪
裏庭へ移動
17時頃になると私たちも仕事を終えるので、そのタイミングでチョコレートを裏庭へ戻します。
とにかく私たちの後にピッタリ着いて来るのが可愛い♡
この日は私は家庭菜園で忙しくしていたら、旦那氏が連れて戻ってきました。
旦那氏大好物のマルベリー摘みにも同行しています。
そして、じゃれ合いタイム。
授乳④
18時頃に温室にて、4回目の授乳。
授乳後にはライトを消して、暗闇で寝かせます。はじめのうちはメーメー鳴きますが、放っておくと10分くらいで鳴きやむので寝ていると思われます。
授乳⑤
21:30頃に温室にて5回目の授乳。これが一日の終わり授乳です。
懐中電灯の元で授乳して、終わればすぐ扉を閉めておやすみなさい☆
こうやってチョコレートとの一日が終わります。
授乳回数はだんだんと減らして授乳量を上げていきますが、乳離れまでの約2ヶ月までは最低でも一日3回目は授乳が必要なようです。
はっきり言って、子ヤギを完全人口哺乳しているとどこにも行けません。
ペットヤギが欲しくない理由
チョコレートの一日を見てわかるように授乳が大変だということが理由の一つとして挙げられますが、それ以上の問題があります。
うちはヤギ農家なので、150匹のヤギを右へ左へと移動させる必要があります。
ヤギは集団行動をする動物ですが、そのときに人懐こいヤギがいると私たちに寄ってきて、それを見た他のヤギが私たちが餌を持っていると勘違いして全てのヤギがこっちへ向かってきます。
あるべき姿としては、私たちがヤギを追い立てて動かしたいのに(牧羊犬のイメージ)、ヤギが私たちを恐れずに寄ってくるのは大迷惑なのです。
たまに買い取ったヤギが元ペットだったりするとこの現象が起きて、ものすごく厄介なことになります。
このままチョコレートをここで飼い続けると問題を引き起こすことは目に見えてわかっていました。苦労して育てた子が厄介の種ではたまったもんじゃありません。
ということで、チョコレートはめちゃくちゃ可愛いのですが、このまま飼い続けても明るい未来はないということになり、売る決断をしたのでした。
チョコレートの売却と一緒に過ごした最後の一日の様子は、次回に紹介します!