ナイーブなMEは兼業農家

西オーストラリア州南部で建築とヤギ飼いの兼業農家。自給自足の生活を目指します!

オーストラリアでブッシュファイヤーと隣り合わせの生活。火には火を🔥


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こんにちは☀

西オーストラリア州で兼業農家をしております、ナイーブMEです👩‍🌾

 

現在ニューサウスウェールズ州で大火災(ブッシュファイヤー)が続いていますが、オーストラリアに住んでいると他人事ではありません。

昨年12月に私の住むファームエリアもブッシュファイヤーにあいました。

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しかも火事が始まった時には日本に一時帰国中で、予定を変更して慌てて帰るも時すでに遅し。我がファームの3分の2(600ha)は燃えてしまいました。

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あれから11ヶ月ですが、燃えたフェンスや配水パイプの復旧作業はまだ終わっていません。雑草がほんの少し生えたくらいで、緑もほとんど戻っていません。

 

ブッシュファイヤーの原因

これだけの大きな火事を何が引き起こしたのか不思議な人もいるかもしれませんが、乾燥と熱と風です。

 

乾燥した大地

雨の続かない日が続くと大地が乾くのは分かると思いますが、オーストラリアは基本乾燥国なので日本人の思う乾燥とはちょっと違います。年間降水量で見てみると、東京は約1600mmなのに対してパースは800mmと半分。そのうえ、こちらは夏が乾燥しているので夏(12月から3月)は月10mm程度しか降りません。

これは沿岸部パースの話なので、これが内陸部に入るともっと乾燥しているわけです。そして農地には乾いた草や作物、雑木林が広がります。炎のための燃料がいっぱいです。

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ちなみに、我がファームエリアは昨年12月から3月頭まで全く雨が降らず、ブッシュファイヤーが完全に鎮火したと思えるのに2ヶ月かかりました。

 

自然発火の熱と風

ギラギラの太陽光が葉っぱを燃やします。

えっ?!

と思うかもしれませんが、風で摩擦が起きて発火することもあるのです。または、ガラスが葉っぱを燃やす(理科の実験みたいに)ことも。嘘のような本当の話です。

または、落雷による火花が引火して燃え広がることもあります。熱だけならまだしも、そこに風が加わり一気に火力アップで広がります。

実際、我がファームエリアの火事は、超乾燥が続いている時に落雷。それが数日後に強風に煽られ炎と化して、ブッシュファイヤーを引き起こしました。

 

オーストラリアの森林の80%はユーカリ

ユーカリオイルはアロマ効果があると有名ですが、その通り葉っぱには油分が沢山含まれています。そんな油分たっぷりな葉が燃えると・・・

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まさに火に油を注ぐ状態です🔥🔥🔥

ユーカリの落ち葉は最強に燃えます。

そんなユーカリがオーストラリアの森林の80%を占めています。

 

地元ファーマー達による消防団

私のように僻地に住むと、消防署は存在せず地元の人で構成される消防団(Fire Brigade)が消防にあたります。このエリアはファームしかないので、その団員には旦那氏を含めたファーマー達で構成されます。定期的にミーティングや講習会が開かれます。

What's up アプリ(LINEみたいなもの)の地元グループがあり、それを通じて○○で火事発生などの連絡が入ります。

 

ファイヤートラック(消防車)

町単位に消防車があり、人口100人の我が町は1台だけあります。大きな街や日本の消防車のように豪華ではありませんが、炎の中走れるようタイヤ周りに水が出たり、タンクが大きめだったり。よっぽどの事がないとこれは出動しません。

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わが町のトラックの消防車の写真が見当たらなかったので、上のは違う町の似たようなのもです。

 

ファイヤファイター(散水車)

これは個人持ちのアイテムですが、車やトラックの後に載せたり、農業用のトラクターに接続したりできる水タンク&ポンプ&ホース付きのもの。

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ファームエリアに住むならば、これは一家に一台の必需品。火事になれば、個々にこれを持ち寄って消火活動にあたります。

 

ブルドーザーやスキッド(重機)

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火の広がりを防ぐための道=ファイヤーブレイク(防火帯)を作るために地面を削ったり、倒れた木を動かしたりするのに使用します。どこのファームも仕事で使うことが多いので、たいていの家庭は重機を所有しています。重機では火は消せませんが、火の広がりを防ぐことが出来ます。

 

ブッシュファイヤーが起きたときの対応

What's up で火事報告を見たら、近くであれば仕事を切りあげてファイヤファイターを持って消火活動に向かいます。隣組精神です。

 

バックバーンとファイヤーブレイク

ブッシュファイヤーの場合は塀などの囲がない火事なので燃え広がりが早いです。そのため、消火活動では現在燃えている火よりも、この先燃えるであろうエリアを先に燃やしてしまうという燃やし返し(バックバーン)が主流です。

風向きを調べて、次に火が広がりそうなエリアからさらに離れた場所を重機で削り、防火帯(ファイヤーブレイク)を作ります。

防火帯から炎に近い側を自ら燃やして、防火帯を巡回しながら炎が反対側に燃え移らないようにファイヤファイターで水をかけたりします。

これが上手くいけば、ブッシュファイヤーが攻めてきたところでバックバーンと出会い、燃料がないので鎮火に結びつくというメカニズムです。

火には火を🔥

とのことですが、当然風向きが変わったり防火帯が狭かったり、風が強くなったりすればバックバーンからさらに燃え広がることも十分に有り得ます。

実は、その経験もしています。

夏前に自分の土地を野焼きしておくことで、ブッシュファイヤーの被害を最小限に抑えることが出来ます。それをしたら思った以上に火が大きくなり、バックバーンにも失敗し10日間消火活動にあたりました。

 

只今ファイヤーシーズン真っ最中のため火気厳禁!

真夏の日差しと、そして西オーストラリア州南部は乾季に入ったので、ただいまファイヤーシーズン真っ只中です。

上でブッシュファイヤーの原因を挙げましたが、それに拍車をかけるようなことはあってはならないので、11月から4月末までは各自の野焼きはもちろんは禁止です。この時期は、キャンプエリアでもキャンプファイヤーが禁止されるほどです。

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現在私の住むエリアでは日中の気温はまだ25℃以下ですが、たまに35℃くらいまで上がることもあります。それプラス風が強いという予報がでると、自治体からメールでTotal fire ban(略してTFB)という通達がきます。

これは 火気厳禁ということで、火事を引き起こしうる活動が全面禁止になります。具体的に言うと、個人宅でも庭での木炭によるBBQや焚き火、エンジンで動く工具の使用、溶接などの火花が出る作業が仕事であれ禁止されます。

このTFBは田舎エリアだけではなく、都市部でもありえます。そして、さらに火事の危険度が増していると判断されると、小さな自治体単位で農業機械の使用さえも全面禁止、家の薪ストーブも使えなくなります。我が家の給湯器は薪なので、お湯が使えなくなります。要はその期間(たいてい1,2日間)は仕事はほぼせず、お湯は電気ケトルかガスコンロで沸かしたものだけしか使えません。この厳しめの通達は、先週末にも発令されました。

 

オーストラリア中が火事?!

そんなこんなで、ブッシュファイヤーとは常に隣り合わせで生活をしているような感じです。

先日、こんなサイトを見つけました。

このサイトで、現在(2019年11月21日)どのエリアが火事になっているか見られるのでみてみると・・・

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オーストラリア中が火事のようです😱

上記サイトから拡大した地図が見えるので詳しい情報がわかります。気になる方は是非とも上記サイトでご確認ください。

まさにファイヤーシーズン!!

 

ブッシュファイヤー映画『オンリー・ザ・ブレイブ』

こんなファイヤーシーズン真っ只中にとんでもない映画を観てしまいました。

いつも図書館から大量にDVDを借りてきて、適当な順番に観ているのですが、こんな時にまさかのブッシュファイヤー映画でした。

アメリカの消防隊の話ですが、彼らがやっていることはバックバーンとファイヤーブレイク作りで、基本的に私の説明と同じです。この映画の消防隊は日頃からトレーニングをしているマッチョ達なので、ファイヤーブレイク作りは手作業ですが!

映画の中では、ブッシュファイヤーの怖さがひしひしと伝わってきます。特にブッシュファイヤー被害の経験がある私にとっては、他人事ではありませんでした。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ブッシュファイヤーの恐ろしさ、人間描写が上手く描かれていて胸に響く映画です。

こちらのサイトでネタバレなしで、上手く映画を説明してあります。

イメージが覆される驚きの多い作品に 『オンリー・ザ・ブレイブ』の“おそろしき美”|Real Sound|リアルサウンド 映画部

 

久々に長くなりましたが、ここのところブッシュファイヤーについて思い出すことが多く、そのうえ映画を観てしまったので一気に書いてみました。

火の用心、マッチ一本火事の元!

これホントです。火花ひとつが炎の海になり得ます。

みなさんも、お気をつけください!